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くすんだネズミ色と薄暗い水色のタイルで出来たさほど大きくない建物が近づいてくる。
踏ん張る両足はガクガクと震え出し、声になれない小さな小さな悲鳴が美羽の口からもれた。
男は目的の場所を見つめるもその瞳に光はない、息使いが荒くなる。
その時。トイレから男よりも遥かに大きな人物が現れた。
岩のようなオデコから左目にかけて青紫になっていた。両手を下に降ろしているが見事な筋肉で脇の下に隙間がある。
かなりゆったりしたラインのTシャツは胸のあたり、太めのジーンズは太股あたりが盛り上がった筋肉でパンパンだ。
『何してんだ?お前?』
極悪人面のゴリマッチョが意外と高めの掠れた声で聞いてきた。
『ヒッ!ヒィィ!』
情けない男の悲鳴と共に美羽の手から男の手が離れた。男から逃れようとずっと踏ん張っていたので尻餅を着いたが、美羽は一目散に自宅へと走った。自室に戻るまで、何処をどうやって帰ってきたのか思い出せない。
あの後は集団登下校が始まったり、地域の老人会のボランティアで小学生の下校時間に合わせて散歩するなど色々な変質者対策が取られた。
あの時に助けてくれたゴリマッチョさんは、そこそこ人気のある悪役レスラーさん(実家がご近所)と判明。
美羽はその時から筋肉に憧れ、自分で手に入れたいと思うほどになった。
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