見当違い

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昨日やっとの思いで瀬那に扇子と手鏡を渡すことに成功した。 慶喜様からの話もあったし,扇子だけは是非とも持ってもらいたかったが,今までのがなんだったのかと思うほど簡単にどちらも手に納めてくれた。 それを… 文句を言いながらも頬を緩ませて眺めてる姿が可愛くて …まぁちょっと弄っただけだが。 ちらと総司をみると口元に両手を添え首を振っている。 ―――どこの女の真似だよそりゃ…。 「土方さんったらっ!不潔ですっ!」 はぁ… 「何かしたの?」 「「!」」 ふと後ろから声を掛けられ振り返ると師走だというのに汗を拭っている瀬那が立っていた。 ―――い…いつから居たんだコイツ…。 「お前ぇこそ何してたんだ?」 「凄い汗ですね。風邪ひいちゃいますよ?」 ―――…お前がする心配じゃねぇ。 「いや今日の分の稽古ちゃんとやってなかったから。」 「……真面目ですね。」 「そうか?朝素振りを少しばかりしただけだったからな。他にすることもないし。」 「素振りしてるんならいいじゃないですか。」 「…毎日よくやるぜ。」 流石にその継続力には頭が下がる。 しかし… 瀬那はものすごく嫌そうな顔をした。
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