見当違い

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「師匠の言いつけですから。」 「あ゛?そうだったか?」 「そうに決まってんだろ!!握り方を教えてもらった時に毎日朝晩1000本以上やれって言っただろうが!!時は叶わなくても見合うだけの量は変わらず熟してんだぞ!」 「あーわりぃ。」 全然覚えてねぇわ。 瀬那は少しばかり悔しそうに手ぬぐいを握りしめている。 「…でも1000本でそんなに汗かきますか?」 …確かに今の瀬那には大した量ではないはずだ。 瀬那は周りを確認し眼帯を外す。 どうやら屯所外では着用することにしているらしく,その下をも拭う。 というか何故か髪がない方が女が上がってしまっているため… 出来れば俺以外の前でははめていて欲しいが………。 「餓鬼に素振りを言いつけたんだ。ところがヘロヘロになって終えきれなかったから残りをつきあってやったんだよ。 そのあと鬱憤が溜まってそうなのを見繕って打ち合い。」 「…元気だなお前。」 「また被害者の会が設立しては叶わんからな。」 やれやれと頭を振りまた着用す。 確かにそんなもんが出来るほど切羽詰ってくりゃ瀬那の身があぶねぇ。瀬那は唯一本物の女だから実力行使が可能だ。 「そう言えば瀬那さんってどうやって襲われたんです?」 「あぁ。おそらく一服盛られた。」 …何とも言い難い総司の質問に瀬那は以前自分の姉様の話をした時のように淡々と回答する。 どうやら自分の辛い過去を話す時に他人事のように話すのはコイツの癖のようだ。 ほんとに自分のことに関してだけ素直じゃねぇ。
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