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総司は戦火が上がるそのぎりぎりまで近藤さんの妾宅で養生させることにした。
南部さん曰く
せめて土埃のない環境で毎日の薬と灸を据えること以外出来ることは無いということだった。
松本先生も総司の事はご存じで方法を模索してくれているらしいので…
無暗やたらに手を出してしまうのはかえってよくないとのこと。
南部さんは…
私の決断に終始眉を潜め…
間が空いては「本当にそれでいいんですか?」と問い続けていた。
すぐに総司を送り灸の手順を説明する。
「少しでもおかしな雰囲気を感じたら藩邸へ行け。いいな?」
「わかってますよ。」
総司の手を握りそう言うとぎゅっと握り返された。
「瑞人さん。」
「?」
顔を上げると総司は優しげに微笑んでいる。
「…ありがとうございます。」
「何もお前にした覚えがないんだが…。」
意味していることは当然わかってはいるが…何食わぬ顔で返した。
事実,感謝されるようなことは何もない。
私は常にその時そうすべきだと思うことを判断しているに過ぎない。
今回のことも総司の延命にはとてもいいとは言えない選択だ。
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