見当違い

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「…佐之さん。」 「なんだー?」 トシに肩を組まれたまま振り返る。 「おまささんと茂君が来てましたよ。」 「ホントか?!」 「えぇ。これ届け物です。」 私は預かっていた文を差し出す。 佐之さんはトシをひょいっと外すと飛びつくようにして私の手ごと頬ずりした。 「あの。」 「元気だったか?!」 「えぇ。おそらく吉報ですよ。子でもできたんじゃないですか?」 「なにっ?!」 「えっ?!えっ!ちょっと待て!!」 慌てる佐之さんと顔を綻ばせるトシを背に奥に向かう。 って…いい加減寒いわ!馬鹿者共め。 何で廊下で立ち話なんだ。師走だぞ師走!もう今年も終わる。 暫く進むと「ほんとうだぁぁぁぁああああっっっつ!!!!」と奉行所中に響き渡る佐之さんの雄叫びが聞こえた。
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