見当違い

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―――――― 「土方さん。」 文を握りしめ飛び出していった佐之助を見送っていると源さんがやって来た。 声を潜め耳打ちする。 「(近藤さんから話は聞いてるのかな?)」 「(……あいつの事か?)」 聞き返すと優しげな笑みを浮かべて頷いた。 真冬だというのに俺の背中をイヤな物が走り始める。 「(瀬那の心は決まっているみたいだね。逃げるように勧めたけど駄目だったよ。)」 …どういうことだ? いや、んなこと承諾するはずがねぇ。 女としては名誉な話だが、そんなこと…ねぇよな? さっきの台詞も…まさかそのつもりで? 含みがあったようには聞こえなかったが………。 「…これからのことを受け入れたってことか?」 「もう腹は決まっていたようだよ。」 「よかったね。」と俺の肩を叩いて源さんは去っていく。 やっと! やっと俺の傍に置いておけるようになったってのに!! かっちゃんも源さんも何考えてやがんだ…!! すぐさま 俺は瀬那の元へ足を向けた。 ――――――
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