見当違い

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お腹に回されている腕を撫でる。 「なぁお前さ。」 「んー?」 トシに身体を預けつつ振り返ると真剣なまなざしで私を見ていた。 言いにくそうにしながらも紡ぎ出す。 「………慶喜様の側室の話、断るんだよな?」 「は?」 なんのことだ一体。 「身辺警護も兼ねてるとは思うが…契りを交して奥に入られると手も足も出せねぇ。 お前ぇが女としての幸せを望んでるって言うなら俺が 「待て待て待て!何の話しだ!!」…。」 勝手に進めるな!説明しろっっ!!! 「あ?…源さんに何か言われなかったのか?」 …逃げるようには進言されたが? 「縁談の話など聞いていない。縁談がきていたのはお前だろう??」 そう言うとあれ?とでも言いたげに身体を放した。 「かっちゃんが源さんからも含むように頼んだと言っていたんだが…。」 「逃げないか?とは言われたが…。」 二人でそろって首を傾げる。 “土方さんたちには上手くいっておくから…” ってもしかして縁談が嫌で逃走したことにするつもりだったのかな? 一応当てがあったが、強い男かの自信がなかったって事か??? 源さんの優しさを汲み取ろうと考え込んでいると、トシは頭を抱え始めた。 「…この話初めて聞いたのか?」 「うん。」 「ははっ…紛らわしい言い方しやがって……。」 トシは怒ってるような喜んでるような… 大変複雑な表情で乾いた笑みをこぼしている。 側室など勘弁してくれ。 侍女だって遠慮する。
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