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「いやぁ…危なかったですねぇ。」
一刻もせぬうちに総司を見に行かせた鍬次郎達が総司と近藤さんの護衛をしていた隊士と共に戻ってきた。
「大丈夫か?」
「えぇ。昨日誰かに見られていた気がしたので今日は藩邸に。」
「そうか。」
皆が下がり,俺がため息を吐くと総司は眉を寄せた。近藤さんが心配なのだろう。
顎をしゃくり総司を案内する。瀬那たちの話じゃ銃傷に詳しい医者が大坂にいるらしくそちらに送るべきだという。
未だ収拾がつかねぇうちに本隊から離すのはあまり頂ける話じゃねぇんだが…。
『…なんか持ってこようとするからこういうことになるんですよ。』
『いや…その…慶喜様からの希望でなぁ…。』
襖に手を掛けると中から声が聞こえる。
すぐさまそれが瀬那の奥入りの話だと分かり俺はそのまま立ち止まった。
「?」
総司は首をこてんと傾げ何故開けないのかと言いたげに視線を投げてくる。
『馬鹿なんじゃないですか。』
『そ,そこまで言ってしまいますか…。』
『当り前でしょう。形ばかりとはいえそのようなことにまで縋るとは…どれだけ弱いんですか。迎え撃つぐらいの心構えは無いんですか!』
『だけど岡田君。徳川存続のためには慶喜様は不可欠なんだよ。永井様からも押されて…』
『私が裏切ったらどうするんです。武市の血が流れるんですよ?寝首斯かれたいんですか?』
『あーー……それもそうなんだが…。』
瀬那が近藤さんに苦言を呈している。
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