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「だけど岡田君。」
「怪我人は黙って警護されていればいいんです。」
にこりを冷笑をたたえた瀬那はそっと近藤さんの傷の上に手を添える。
「……はい。」
「一先ずさっさと動けるようになって帰ってきてください。お小言はそれから聞きますよ。」
「ふぅ…すまないね。」
近藤さんが了承しちまえば,俺も諦めざるを得ない。
此処にいて悪化させるわけにもいかねぇし,今度の護衛はもっと力量のある者がつかねばならないのは周知の事実なのだから,しょうがない…か。
瀬那はちらりと優しげに微笑む南部さんに目配せをし二人は退室していった。俺も総司を残し後を追う。
『一筆取ってもらえますか?』
『勿論ですよ!今すぐ飛脚を飛ばします!』
南部さんの嬉しそうな声が飛んでくる。
『そのようにあまり喜ばないで下さい。護衛には総司が適任だと思っただけなんですから。』
『わかっていますよ。』
―――俺が思っているより悪かったんだろうか…。
南部さんは総司が戦線離脱することを喜んでいる。瀬那は些か呆れ気味だ。
「おい。」
物陰から声を掛けると南部さんはびくりと肩を震わせた。それを見た瀬那は笑みを必死にこらえている。
「あの…えっと…。」
「ふふっ…頼みましたよ。」
慌てる南部さんを置き退席しようとするので腕を掴む。
「総司…なんかあんのか?」
「別に。いつも通りよくはなっていないというだけの話だ。戦次第だと報告しただろう?ねぇ,お医者様?」
同意を求められた南部さんは苦笑しながら頷く。
南部さんはどうも瀬那の味方である節がある。しかし,俺に医術はわからねぇ。
俺はため息を内で溢しながら瀬那と部屋へ戻った。
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