鳥羽・伏見の戦い

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「慶喜様のご意見に朝廷はとても喜んでおいでのようなのだが…。なぜ長州らはそれを荒立てるのだろうか。」 床に伏せっている近藤さんがぽつりとそう漏らした。 トシに詳しく聞いたところ、大政奉還の際慶喜様は幕軍、新政府軍、双方に利があるように穏便な策を提示していたらしい。 徳川の領地・領民をすべて天皇に戻すのは簡単なことだが反発を生むと。そこで暮らす民を突然野に放り出すことは出来ず、幕軍にも何らかの形で参加を促すことでそれを最小に抑えられるはずだと。 それを叶えるために徳川は必要不可欠!としたようだ。 「…自由がきかねぇからだろ。何か事を起こす度に、反対だ何だと一々声を上げられたんじゃ邪魔にしかなんねぇよ。朝廷が俺らの肩を持ってる分、まだ時間がある。慶喜様がどれだけ粘ってくれるかに掛かっているが………。」 「…二条にて慶喜様とお話ししている最中に、江戸で破壊工作や流言が頻発していると報せが入った。」 「「「!!」」」 「恐らく薩摩だろうと言うことだ。」 痛みの為か、その御心を思ってか顔をゆがめながら近藤さんはこぼす。 「軍事衝突はもはや避けられん。朝廷が寝返りでもすれば…我らは賊軍になってしまう!」 「何言ってんだよ!一気に片を付けるいい機会じゃねぇか!そのために今までやってきたんだ。暴れてやろうぜ!」 トシの強気な台詞に近藤さんの目に力が宿る。 京には薩長の兵が布陣し,江戸は江戸でその力を削ぎにかかっている。これにそれまで溜め込んでいたものが爆発した会津・桑名藩がさらに兵を率いて京への進軍を開始した。 おそらく相手方にもこの報せはすでに入っており血気している頃だろう。 源さんと話した通り,正義の御旗がどちらにもない以上,薩長は官軍になるいい機会を得たともいえる。
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