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「…もう一度行ってくる。」
拳を握りしめ考え込んでいたトシが、苦い顔をさらに顰めながらつぶやいた。
「このまま待機してるだけでいいわけねぇだろ…。
援軍がこちらに向かっているったって薩長だってそりゃ同じことなんだ!こんな一か所にまとまってただ包囲されるのを待てっていうのかよ!!!」
スクリと立ち上がると奥の間へと向かっていった。
私はそれを黙って見送る。
僅かな期間であったとはいえ、幕臣になった人間だ。皆トシの能力には一目置いているのは明らか。
だが、
トシが全軍を率いているわけではない。
―――ここまで皆が皆出張ってきて、穏便に事が済む方法とはどういう方法なんだ…。
慶喜様は戦に否定的であるらしい。朝廷に提案した手前…というやつかもしれないが、もう止むなしだろう。
私も部屋から外に出る。
皆が走り出してはかなわない。
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