第3章 彼と赤いワンピース

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濡れた手を拭いてから、頭を下げて挨拶をした。 きっと私の表情が硬かったのかもしれない。 笛吹主任は怪訝そうな顔で、ちらりと修ちゃんを覗き見る。 「加賀谷も、早いんだな」 ぽつりとそう言って。 私は奇妙な空気を感じとられているんじゃないかと気が気じゃない。 「昨日、研修旅行の打ち合わせが半端だったから、早めに来てもらったんだ。会議もあるし。な?」 な?って……。 そんな、わざと爽やかに言わなくても。 「はい…」 としか、言いようがない。 修ちゃんは笛吹主任をまったく気にしてない風で、コーヒーメーカーにマンデリンをセットし直してる。 この飄々さが、かおるさんの言う「表面的」ってやつじゃない? その様子を見て、若干笛吹主任の敵意が見え隠れするから。 気まずいなぁ……。 妙な二人の雰囲気に頭がクラクラしそう。 「今日が会議だっけ?大変だな」 「はい」 なんとか無理やり、つじつまを合わせた感じ。 .
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