第1章 彼の背中

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………。 二人きり…。 コーヒーメーカーはしきりにポコポコと音を立てながら、いい匂いをさせている。 やっぱりさっきの笛吹主任との会話を聞かれていたのかもしれない。 でも打ち上げだし、お世話になったんだし……。 そんな考えが頭の中を駆け巡る。 私がトレーを出して人数分のカップを準備している間、加賀谷主任の視線が私の背中に当たって… ………る気がする。 だから──。 背中を見つめるのは好きだけど、見られるのは嫌いなの。 しかも今は二人きりだし。 ぱたっと動きを止めて背中を向けたまま、ちらりと首だけ振り返り、 「あの主任…、コーヒーなら席までお持ちしますけど?」 ちょっとぶっきら棒に言葉をぶつけてみた。 .
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