第1章 彼の背中

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彼もそれをよく知っているから、何かっていうと遊びに来ては泊まっていた。 「はい。叔母さんの料理はいつ来ても美味いです。 俺、今は独身寮だし料理は苦手だから助かります」 相変わらずお上手で。 「私、もう寝るから。修兄はゆっくりどうぞ」 両親の前では尚更素直になれなくて、早めの退散。 「いや、俺も帰るよ。遅くまでお邪魔しました」 「あらぁ、まだいいじゃない」 「いえ、明日も仕事ですから。ご馳走さまでした」 そんな二人の会話を背中で聞きながら、リビングを出る。 お母さんたら、今日電話したとき修ちゃんが来るって教えてくれてもよかったじゃない。 そうしたら、打ち上げなんて早く切り上げて帰ってきたのに…。 ため息を吐いて階段をトトンと上がったところで「花」と呼び止められる。
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