第1章 彼の背中

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この恋が叶うことはない。 それは硬い。 ならいっそのこと嫌われたいって思う。 思うのに彼はいつも優しくて。 だから私は少しでも傍にいたくて、同じ大学に進んで同じ会社に就職して。 私…、哀しいくらい一生懸命だ。 矛盾する二つの思いは私を苦しめる。 姿を追いかけたいのに正面からは見れなくて、いつも見つめるのは背中ばかりで…。 幸い彼とは名字が違うから、会社内では私たちが親戚だということは誰も知らない。 だからと言って同じ課になるなんて神様のイタズラとしか思えない。 近くにいればいるほど遠くに感じる人。 それが『加賀谷修』なんだ。 この先…。 私は妹のように大事にしてくれる彼の優しさを、一生受け入れなければいけない。 はたして私にそんなことができるのだろうか? ………否。
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