第1章 彼の背中

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また、朝が来る。 エレベーターホールで彼の背中をじーっと眺めながら、昨日のことを巡らせて。 ううん、だめ。 余計なことは考えない方がいい。 自分が破滅に向かうだけだ。 「おはよう」 私は驚いて両肩が上がる。 振り向くと声をかけてきたのは笛吹主任で。 「あ、おはようございます。昨日はごちそうさまでした」 深く頭を下げてお礼を言った。 「こちらこそ楽しかったよ。また機会があったら誘ってもいい?」 「あ、の…」 どう答えたらいいのかな。 これって社交辞令だよね? 「はい、是非」 私は朝にしては明るすぎる声で返事をする。
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