第1章 彼の背中

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──チーンッ。 ようやく着いたエレベーターに笛吹主任と乗り込む。 遅い分だけ混んでしまった箱の中はぎゅうぎゅうづめ。 ブザーが鳴らないのが不思議なくらいで、笛吹主任ともバラバラに。 2階で一度扉が開いた。 人波に押されて追い出されそうになる。 やばっ、持ってかれる。 その途端、誰かが後ろから私の腕を引っ張って。 辛うじて引き戻される。 トンッと私の背中が誰かの胸板にぶつかったのを感じた。 その胸が誰のものなのか。 振り向かなくてもわかる。 だって私の腕を掴むその手首に、オメガの時計が見えたから。 「危なかったな」 真後ろで囁く声がする。 .
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