第1章 彼の背中

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箱は扉を閉めると、再び私たちを乗せて動き出した。 どうしてだろう。 修ちゃんはいつもそうだ。 何でもないようなことで、人をドキドキさせる。 さらりと助けるタイミングの良さは無条件の優しさを勘違いさせる力がある……。 すぐ後ろに立つ彼を感じながら、どうしようもなく切ない気持ちになった。 素直に喜べない自分がいる…。 早く着かないかな… 見つめる先は壁のデジタル表示。 息苦しい空気を抱えて、ようやく4階に到着。 4階までの数秒が、こんなに長く感じたことは今までになかった。 扉が開いて、急いで廊下へ飛び出る。 「高久さん」 誰かが私を呼んでいたようだったけど。 焦る私はバッグを抱えて、ロッカー室へと走っていた。 .
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