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まだ、人けの少ないロッカー室でやっと息を整える。
壁際に設置された洗面所に映し出された自分の顔は、やけに赤ら顔で驚いた。
「お礼、言うの忘れちゃった…」
掴まれた腕はそこだけ感覚を失っているかのようで。
「こんなことくらいで、この有様…」
両頬をペチッと叩いて情けない顔の自分に気合を入れた。
そして、自分のロッカーに戻って扉を開けると、周囲に人がいないことを確認する。
それからゆっくりブラウスのボタンに手をかけた。
実は、私が人より早く職場にくるには、もう一つ理由がある。
それは、私の右肩の後ろから背中にかけてできた大きな傷。
中学生の頃にできた傷。
ノースリーブでは肩の傷は隠れないから、夏は着る物を選ぶ。
だからプールの授業は嫌だった。
できれば人には見せたくない。
それで、人より早く職場にきて着替えをしている。
髪だって少しでも背中が隠れるようにって、ずっと伸ばしてて。
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