第1章 彼の背中

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私も慌ててかおるさんを追いかけるようにロッカー室から出る。 「かおるさん!」 先を行く彼女に声をかけても、片手をひらひらさせるだけで待ってはくれない。 かおるさんに気づかれたかもしれない。 どうしよう…。 経理課のフロアに足を踏み入れたところでようやく追いついた。 「おはようございまーす」 かおるさんの大きな声がフロアに響いて。 「あの、かおるさん…」 「あー、今日は苦いの飲まないと目が覚めないかも」 私の声は聞こえていないのか、席にも着かず彼女はまっすぐ給湯室へ向かう。 私はとりあえず課長に挨拶をしてから自分の席にお弁当を置いて。 「高久さんコーヒーもらえる?」 笛吹主任のそんな頼みも聞きながら、急いで給湯室へ。 ほかの人が来てしまうと話ができない。
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