第1章 彼の背中

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飄々と私の心臓が止まるようなことを言う。 かおるさんは立ち尽くす私をちらりと見てから、視線をカップに戻した。 み、見られてた? 「そんな顔しないでよ。言わないから」 「あの…」 自分が今どんな顔をしてるのか、全然わからない。 ただ、かおるさんは意地悪顔はしていない。 「黙っててあげるけど、進展したら教えてね?」 「あの、そんなんじゃ…」 「コーヒー持ってくよぉ。後はよろしくね」 かおるさん…。 鋭いことを言っておきながら、まったく興味がないって感じで行っちゃった。 あっけらかんとしたかおるさんのペースに笑いが出る。 ここで私と修ちゃんの関係を知る人は誰もいない。 かおるさんも純粋に他人同士の恋愛として見てるわけで。 なんだかそんなことが単純に嬉しかった。 関係がバレない限りは気味悪がられることもないし、後ろめたい気持ちも薄らぐから。
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