第2章 彼のコーヒーミル

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シンプルな部屋。 モノトーンの家具が修ちゃんらしい。 黒い二人がけのソファの横には小さなサイドボード。 その上に可愛らしい蓄音機の置物が。 ダークブラウンの木箱の上に、金属のレコード盤と音が吹き出るラッパが乗っている。 ……オルゴール? 手に取るのは悪い気がして、屈んで覗き込んだ。 あのツマミで音が出るのかな…。 「何覗いてんの?」 着替えを終えた修ちゃんが、シャツの襟を直しながら私の後ろに立って同じように覗く。 振り返ると、久しぶりの私服姿。 爽やか過ぎてクラッとくる。 「あぁ、これ?アンティークだけどいいだろ?」 「うん、可愛い。オルゴールでしょ、何の曲が流れるの?」 「曲?」 修ちゃんは含み笑いをして、その蓄音機を手に取るとツマミを掴んで…。 「あっ…」 それは引き出しになっていて、その箱を引き抜くと私の鼻先に近づける。 仄かに漂うこの香りは…… 「コーヒー…?」 .
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