第1章 彼の背中

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動く沈黙の箱。 この時間は嫌い。 自分の背中を見られてるような気になるから。 そんなありえない視線を意識しながら、待つこと数十秒。 壁のデジタルが[4]を表示すると扉が開いた。 私は足早にホールへ飛び出す。 その頭上から、 「おはよう」 「おはようございます…」 横に並んでいつもの挨拶が聞こえてきたかと思うと、あっという間に私を追い抜いて行ってしまったストライプのシャツ。 彼は私の上司で加賀谷修(カガヤシュウ)。 経理課2係の主任。 上司と言っても私は1係だから、同じフロアで仕事をしているだけで、ほとんど話はしないけど。 彼は真っ直ぐ経理課のフロアへ。 私はロッカー室へと足を運ぶ。 そうして今日も、また同じ一日が始まる。 .
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