第3章 彼と赤いワンピース

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私はあまりの気持ち良さに自然と瞼を伏せて、目の前の胸に頭を預けた。 すると背中に大きな手が添えられたのを感じて、じんわり温かくなる。 もしかして…。 抱きしめられてる? 途端に穏やかではいられない気分になって頭の中は真っ白。 「…さっき。何言いかけたの?」 「え?」 私の動揺とは裏腹に、修ちゃんは落ち着いた声で尋ねてくる。 …さっき、なんだっけ? 何か大事なことを言おうとした気が…。 思い出せない。 「忘れちゃった…」 「なんだよ」 口から出てきたのは、いつもの呆れ口調。 でも、くすっと笑う声が微かに聞こえて。 背中に回された手が、ギュッと私を抱きしめて。 私は、またドキドキが加速する。 でも。 このまま…。 もう少しだけこのままで…。 .
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