第3章 彼と赤いワンピース

33/38
前へ
/598ページ
次へ
そんなに長い時間ではなかったのかもしれない。 修ちゃんは髪を梳く手を止めると、私が握っていたカップをそっと取り上げて。 寄りかかっていたテーブルからカツンとカップを置く音が響く。 私はどうしていいかわからずに、取り上げられたカップの行方を捜していると、 「こっち向いて」 顎をさらわれて修ちゃんと目が合った。 黒い瞳が私を見つめている。 こんなに近くで修ちゃんの顔見たことないかも…。 「花…」 その声にピクッと体が揺れる。 見下ろす顔はいつになく真剣で。 ……修ちゃん…。 「花、俺────」 .
/598ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4402人が本棚に入れています
本棚に追加