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『そんなところで何してるんだい?沢田綱吉』
部屋の入口の真ん前でちょうど行く手を阻むようにちょこんと佇む綱吉。
決して口には出さないが、この忙しい時に正直ちょっと邪魔だと雲雀は密かに思っていた。
無表情ながらも少し冷たい視線が彼の心情を物語っている。
『ヒバリさん。あの…』
何やらもじもじと顔の前で人差し指と人差し指を動かし、口ごもる綱吉を見ていて、いい加減ハッキリしろとだんだん苛々した気持ちが込み上げる。
『何て呼べばいいですか?』
だがそんな感情も彼のこの意味不明で想定外な言葉によってあっという間に覆されることとなる。
『……は?それどう意味?』
『いや、あのですね…確かにあなたはヒバリさんだけど、十年前の俺が知ってるヒバリさんではなくて、十年後のヒバリさんじゃないですか。
あなたにはあなたの人生があって、十年前のヒバリさんにも別の生き方がある』
益々意味が解らないとばかりに雲雀は綱吉を怪訝な目で見つめていた。
『だから…俺が言いたいのは…同じ人だけどやっぱり違うし、いつまでも同じ呼び方じゃダメなんじゃないかなぁって思ったんです』
綱吉の言わんとしていることは解りそうでやはり良く解らない。
いくら考えても理屈が通らないからである。
だが、もしかしたら彼は、十年前の雲雀と今彼の目の前にいる雲雀との間に差を付けようとしているのだろうか。
決して親しい仲とまではいかないが、確かに十年前と比べれば彼と今の自分は大分言葉を交わすくらいまでになった。
あの頃の自分は強い者にしか興味を抱かず、彼のことは特に眼中に入れることもなかった。
弱いクセに、だけど本当は強いのか。
よく理解出来ない彼自身を。
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