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僕は幼い頃の記憶を辿りながらゆっくり語り始めた。
マスターは、無機質でガラス質のビー玉みたいに色素の薄く感情がまるで無い眼差しを僕に向けている。
見つめられると、一瞬たじろぎそうな鋭くて暗い視線だったけど、決意を決めて話を切り出した。
「僕の幼い頃の記憶に、とっても興味深い謎が眠っているんですよ。
それが、あまりにも不可思議でどうしても解明出来ないんです。」
マスターは、何ら顔に表情一つ浮かべず
僕をただ見据えていた。
だが僕は、変わらず口を開く。
「僕は、幼い頃にある海辺で八体の死体を目撃したんです。気になった僕は、その海面に浮かぶ死体に近付いて所々を調べて見たんです。すると、全ての死体の体の一部にナンバーの焼き印が押されていました。
その、ナンバーが実にまた不可思議で。
その数字は分数で表記されていたのですが、分母が死体の総数と同じ8を表していて。分子はそれぞれに2の倍数が表記されていました。これは、もしかしたらエディションナンバーというものを引用しているのかなと思ったんですが......。」
「そうなると、どうしても不可解な点が出てきて。八体の死体の総数に対して明らかに分子が多いんですよね。一体ずつ殺害しているわけだから、倍数にはなるはずが無く、一つずつ総数の8まで増えて行くべきなんですよ。何故、2つづつ増えて行っているだろうか......。」
ここまで言うと、僕は口を閉ざして沈黙を作った。
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