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前菜を乗せた磁気の皿を運んでくるマスターの皆無の気配は亡霊のようで、黒い袖口から覗いた青白い手が視界に現れ横から差し出されると、何時もハッと驚いてしまう。
その度、彼はそんな僕の表情を眼にしては、満足げに不敵な笑みを浮かべた。
マスターを見ていてよくよく僕は、彼の存在を不思議に感じていた。
それも、彼の容貌や仕草だけでは無くて何か引っ掛かるような気掛かりな胸騒ぎが有った。
それは、僕が彼に愛着を覚えてしまう理由にもしかしたら繋がっているのかも知れない。
愛着というよりも、もっと深い部分で繋がる理由が................。
確信には至らない疑問に少しでも近付きたくて、僕に背を向け厨房に音も無く立ち去ろうとするマスターを呼び止めた。
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