真逆な彼女

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その日は委員会の仕事が遅くまでかかり、たっくん達と一緒に帰ることができなかった。 「後で謝っておかないと…」 そんなことを考えながら、ゆっくりと歩いて帰っていた。 そして、登下校にいつも通る公園の前を通りかかった。 「あれ…?たっくん…?」 2メートルほどの高さで張り巡らされたフェンスの奥で、小さい子達とサッカーをしているたっくんが見えた。 「何をしてるんだろ…?」 ふと気になってしまい、たっくんにばれないように近づき様子を伺う。 「おにーちゃん!今日は何を教えてくれるの?」 ボールを持った小学生低学年ぐらいの子がたっくんに親しげに近づく。 「んーそうだなぁ…じゃあ…ドリブルのやり方でも教えてやろう!!」 そう言ってたっくんが小さな子からボールを受け取る。 「いいか、ドリブルはな、こうやって…」 小さい子に分かり易く説明しながら、小刻みにボールをけるたっくん。 「すっげー!!やっぱおにーちゃんサッカー上手だな!」 「はっはっは、そうだろうそうだろう!よし、じゃあお兄ちゃんからボールを奪ってみろ!」 そう言ってたっくんがボールを蹴りながら子供たちと距離を置く。 「よーし!!」 「お前はそっちからだ!」 「わかった!」 「いっくぞー!」 4人の男の子たちがたっくんからボールを奪う為に追いかける。 「はっはっは!どうしたどうした!そんなんじゃ俺からボールは奪えないぞ!?」 そう言いながら、たっくんが前後左右へと複雑にボールを移動させる。 まるで体の一部かと思ってしまうほど、ボールは綺麗に転がっていた。 「待て待てー!!」 「待てって言われて俺がおとなしく待つと思うかー?」 そう言ったたっくんは、いつもの変わらない無邪気な笑顔を浮かべていた。 そして、気が付けばあたしはその笑顔に見とれてしまっていた。
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