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『プルルルル…』
けたたましい音をホームに響かせながら、新幹線のドアがゆっくりと閉まる。
その白い車体が動き出す頃、彼は車内の指定席の窓枠に頬杖をつき、ため息を漏らしていた。
「はぁ…、こっからは本格的に金島(カナシマ)かぁ…。」
彼は手元の封筒から白い紙を取り出すと、カサカサと音を立てながらそれを開く。
そこには機械的な文字で『辞令』と書かれていた。
彼の名は山神 章(やまがみ あきら)、国立大を出て、国家公務員一種試験という超難関を突破したエリート警察官である。
異動先は日本の本土最南端に位置する金島県(かなしまけん)。
20年前から新幹線の開通、新金島国際空港の創設、新金島港の開港と開発が立て続きに進み、それに伴う地価の上昇、急ピッチでの道路開発、ビルやマンションの建設ラッシュが発生。
一時期の金島はいわゆる開発バブル、それも『超大型』の開発バブルであった。
そしてその時期、実に10年を経て現在の『南の大都会・金島』は完成したのであった。
章の配属先は大繁華街、神文町(しんもんちょう)の側に位置する『金島中央警察署』。
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