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ホームへ降り、人混みの中を改札へ向かう。平日の昼間だというのに、帰宅時間の都心の駅並みに人が多い。
改札を抜け、『金島中央駅東口』と書かれた看板の方向へ進む。
この時点でやはり、暑い。
さすがは南国と言ったところか。
東口のエスカレーターを降りると、あまりの眩しさに章の目の前は一瞬、真っ白になる。
「うわ…めちゃくちゃ暑いな。」
そこに広がる光景は、駅前のバスターミナルと屋上に観覧車が設置された駅ビル『サンライズ・カナシマ』、数々の高層ビル、そして道路や駅前に溢れる車や人であった。
「すげぇ栄えてる…。金島は田舎だ、なんて言ったのは誰だよ…。」
そんな独り言を呟きながら、タクシー乗り場に向かって歩く。
客待ちのタクシーがズラリと並ぶ中、先頭の車に乗り込む。
「こんちわ。お客さん、どこまで?」
愛想の良い、頭の禿げ上がった運転手が顔をこちらに向けて言う。
「ああ、金島中央警察署までお願いします。」
その瞬間だった。
運転手の眉間に少し、皺が寄る。
警察官として、人間を観察する能力に長けた章だからこそ気づく程度の反応。
「…はい、中央署ですね。」
何事も無かったかの様にタクシーは走り出す。
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