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しかし、章は今の奇妙な違和感が引っかかっていた。
警官嫌いの運転手なのか…?
違和感は消えないまま、街の大通りであるシドニー通りを進む。
路面電車が走っているのが見える。
最近は全国で次々と路面電車が廃止されている中では珍しい光景だ。
片側3車線同士の大きな交差点を2つ直進すると、シドニー通りの右側に大きな建物が見える。
タクシーはその建物の前の信号で右折し、駐車場に入って行く。
車がゆっくりと止まる。
「はいよ、750円。」
先ほどの表情の変化が、まるで嘘だったかの様に愛想良く笑顔を浮かべるタクシー運転手に、章は1000円札を手渡しながら聞く。
「あの、運転手さん。」
「はい、250円のお返しですね。…なんです?」
「…警察が…嫌いなんですか?」
その問いに、タクシー運転手は目を反らしながら、苦笑してみせる。
「…この街に警察が好きな人なんて、いませんよ。」
そう言うと、少し下を向く。
どうやらこれ以上追及もできそうにない。
「…そうですか…ありがとうございました。」
タクシーを降りると、ドアが自動で閉まり、タクシーが発車する。
「何だってんだ、一体…?」
その場で振り返り、警察署を見上げる。
改装してまだそれほど経過していない為か、綺麗で立派な建物だ。
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