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ヤツはボクに向かうかよしえさんにベロを伸ばすか迷ってるみたいだ。
よしえさんは悲鳴を止め、凍り付いたように固まっている。
長い睫の大きな目をいっぱいに見開いている。
真っ黒な瞳がヤツとボクを行き来する。
それから闇に溶けてしまいそうな黒くて長い髪を振り乱して、いやいやをするみたいに首を振った。
喉が掠れてるのか声は出てないけど、再び悲鳴を上げたみたいだ。
ばちん
何かが弾けるような音がした、と思ったら、少し遅れて落ちてきた電線がヤツに当たり垂れ下がっていた。
電柱に繋がっていたやつだ。
ばちばちばち
感電。
大きな音を立てて、電線を流れる電気がヤツを焼いた。
頭に這ったベロや長い首筋にうごめく血管や手や足やから黒い煙が上がる。
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