14人が本棚に入れています
本棚に追加
『ケンタくーん。どこ行ったのー?』
人間の子供――男の子の声。
それが数メートル過ぎ去ったヤツの方から聞こえた。
とてもじゃないけど、そんな音が出せるような喉には見えない。
だけどその声は間違いなくヤツの発したものなんだ。
『ねえ、いるんでしょ? この辺にいるのはわかってるんだよ』
ヤツはしつこくボクに話しかけてくる。
もちろん絶対に返事なんかしない。
かちかちと鳴りそうなアゴもぐっと力を入れてガマンする。
『ケンタくーん、遊びましょー。もういいかーい、もういいよー』
ずるりと長い、蛭みたいなベロを出して自分の頭に這わせながらそんなことを言う。
ヤツはそのベロを鼻の孔からこじ入れて人の脳みそを啜るんだ。
ふっくんがそうされるのをボクは少し前に見たんだ。
そして今喋ってる声はそのふっくんの声なんだ。
最初のコメントを投稿しよう!