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俺はニノが評した「怖いくらい綺麗」の意味を、呆気なく思い知らされることになった。
ヤバい――直視できねえよ…。
開いたままで渇きを覚えた口からあっさり魂が抜かれそうな気がして、思わずサトリ君から視線を外す。
俺の態度は誰から見たって挙動不審すぎるだろうけど。サトリ君は気付いてないのか。
「――まぁ…。あと撮りラスト1話だけだから」
平気。とのんびりした口調で話してくれたから、何とかまたゆっくり寄せていくように視点をサトリ君に合わせる。
「そっか…お疲れ様」
俺の手が覚えてた頬のライン。
あくまでも手のひらに優しく寄り添って、吸い付くようななだらかな曲線を描く、可愛らしさの塊のような感じだったのに。
多分、例の雑誌のスチールのためにウエイトコントロールしているのだろう。
久々に生で見たサトリ君は、フェイスラインもカラダのラインも驚くほどすっきりして。
触れたら融けて一瞬に消えゆく薄氷か。
たった1月弱会わないうちに、多分誰もが思わず手を伸ばしてしまいそうな冷たさと、危うさを手に入れていた。
「――颯君…わざとらしいぞ」
案の定その危険人物決定なコノルンが、サトリ君の後ろから両手を肩に載せて。あまつさえ背中から密着して顎を右肩に載せながら俺を覗き込んできた。
「何が?――」
どうでもいいからサトリ君から離れろ。とは、プライドが邪魔して絶対に口にはできない。
「この小野さん見て弄らないトコロが気持ち悪い」
「今度のあむあむの為に準備してるんでしょう?――それくらい俺だって解るよ」
「解ってるなら猶更なんで振ってこないんだよ」
「振る前に御前に邪魔されたんだよ、コノルン」
「何だ?――お前等何喧嘩始めてるんだ?」
俺とコノルンの間に壁のように立たされたサトリ君が、俺達が言い争って戸惑った顔をするのも何かカワイイと思う俺は、かなり急性サトリ症候群の重篤患者だ。
「「喧嘩じゃない(ねえ)よ」」
思わずコノルンとハモって反論した途端。
「はいキター、醜い争い~!」
と、いつの間にか楽屋入りしてたニノが。サトリ君の腕を引いて。コノルンから引きはがした。
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