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「ほーら颯ちゃん。こんな感じらしいよ~?」
それを見せられて思わず俺は。ニノの手から雑誌を奪い取るとその写真を食い入るように眺めた。
「なんっだコレ…!!マジかよ」
『再来週のあむあむの発売を差し止めさせるにはどうしたらいいか』という事を、冗談じゃなく、本気で、頭をかきむしりながら考え始める。
「あーあぁ、動揺してる動揺してる――?予告でこれって…もう本誌が凄く期待できちゃうでしょ?」
次の号発売に合わせて、こんな感じの広告が、JRにも地下鉄にも、今中吊りになって貼られちゃってるわけですよ。
さー、今回は何枚ぐらい持って行かれちゃうのかなぁ…。楽しみだなぁ。って、
多分のたうちまわってる俺を眺めるのが楽しいから、ニノはこんな事するんだろう。
ホントどんだけサディストなんだ。
「――こんなサトリ君を大衆の目に晒すなんて…犯罪だろ!?」
「何バカ言ってんですか。――これがオシゴトでしょ?」
「ああぁあぁ…、解ってます、それは俺だって、解ってるんだよ~!!」
サトリ君断ちをしてる俺にはあまりにも刺激が強すぎるそのページを閉じてテーブルに放り出したのに。ニノはまた手にしてニヤニヤしながら眺めてる。
「もー。服着たままお風呂に浸かっちゃうなんて…どんなプレイなんですかね…――ね!?颯ちゃん」
見えないようにしたはずなのに。はっきりと瞼に焼きついたその予告カットのサトリ君の姿が、鮮やかに脳裏にフラッシュバックする。
淡い真珠の色をしたバスに湯を張って、真白い無地のTシャツ着て、デニムも穿いたまま。
仰向けになって身体を水面に浮かべてるサトリ君は。
狭いバスの中で身を捩らせて。右の手のひらを項に当ててるのが、グラビアアイドルのポーズみたい。
貼り付いて肌の透けているTシャツの胸元をぎゅ、って左手で掴み締めて。
レンズを見上げてくる視線が、切なそうで。
――颯君が向こう側に居ると思って、撮るからね?――
声までよみがえる。
「プレイだ。完全にプレイだ…」
がっくりとうなだれる俺に。遣りすぎるまでやらないと気が付けないサドっ気在り過ぎるニノはやっと俺への攻撃の手を緩めた。
「颯ちゃん?――ゴメン…元気出して?」
サトリ君断ち解禁したら絶対にリアルでやってもらう、と俺は決めた。
「くそー!!こんなエロい格好…俺だってやってもらったことナイぞ!!」
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