キラーチューン(颯×サトリ)

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 ママゾンで予約しておいて、その号のあむあむが発売日当日に家に着くように準備しておいた俺は。スケジュール終わってからとにかく真っ直ぐに家に戻ってメールポストを覗き込んだ。 「キター!!」 急いで家に入って、鞄もソファに立てかけて着替えるのも後にして、とにかく座り込む。 開ける前からこんなに興奮できる荷物ってあるんだろうかと、鋏やカッターで中身を傷つけるのが嫌だから慎重に封筒のテープをはがしてから雑誌を取り出したら。 表紙チラ見しただけで思わずソファーの上に倒れ込んだ。 「愛しくて美しい、男のカラダ」 ――なんてキャッチコピーだよ。 「その腕に抱かれたい」 ――ふざけんな誰がそんなコトさせるか!! サトリさんはジャケットを羽織りかけてるショットで、タンクトップから覗く肩や腕や鎖骨が何か全部脱いでるの見せるより確実にエロい気がする。 どうする俺…この先全部正気で見られるのか!? ダメだ、このままじゃ無理だ。と。特集記事を開くのは止めて。表紙も伏せてテーブルに置いて立ち上がった。  「嘘、颯ちゃんまだ見てないの!?…――マジで!?」  大きすぎる反応に狼狽えた俺は、し――――――ッ!!!と、右の人差指を唇に当てて、左手はソファから起き上がったニノを押し倒すような恰好で口を押さえにかかった。 「馬鹿!何大きな声出してんだって、落ち着けよニノ!」 「嫌――ッ!!誰か助けて!!颯ちゃんに襲われる!!」 犯される!!とまで楽屋の外に響きそうな大声で叫ばれて、慌てて両手を挙げてソファから起き直る。 「人聞きの悪い事言うなよ。俺だって襲う相手は選びます」 少し着崩れたジレの身頃を引っ張って整えたニノは、押し倒された勢いでぐしゃぐしゃになった髪も手櫛で整えた。 「あーびっくりした。まさか小野さんにも普段こんな手荒なマネしてるんじゃないでしょうね…」 もしそうだったら絶対貴方達別れさせてやりますからね。なんて言うのは、多分半分以上本気だから恐ろしい。 「――俺は大事な人には乱暴はしません」 「『襲う相手は選ぶ』のに『大事な人に乱暴はしません』って、――自分で言ってて何だか変だって思わないの?」 「あ…」 ニノに指摘されて、確かに変だと思い当たる。 「珍しいねえ…颯ちゃんの論理破綻。――それにしても…どうしたんですか?あんなにあむあむ楽しみにしてたのに…買わなかったんですか?」
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