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女性ゲストと一緒に浴衣や夏着物着てベランダで花火をしたり。かき氷作って食べてみたり、流し素麺してみたり。
何で撮りなんだよ、何でゲストが居るんだよ、なんて延々心の中で愚痴ってる間に撮了して。
「ひと足先に『日本の夏』ちょっとだけ満喫できたのかなあ、ね…サトリ君」
浴衣を呆気なく脱いで帰り支度終わらせた俺が、まだお着物着た師匠サトリ君に声を掛けたら。
「――ちょっとだけなんて足んないぞ。もっとたくさん、颯君と『日本の夏』したい」
俺だってこの姿のままのサトリ君をお持ち帰りしたいよ。
ただ最近周期的にやってくる、衝動に近い思いは、サトリ君に曝け出すにはあまりにも危険だから。
飼いならして抑えるコトが出来るようになってからじゃないと、傍に居るのは無理だ。
「俺だって出来ることならそうしたいけど。またお互いこれからいそ…「忙しくなるでしょ?なんてのはもう、聞きたくない。だって何時だって忙しいんだから」――サトリ君…」
「俺最近、颯君の困った顔しか見てない気がする」
俺が言ってる事って、そんなに颯君の事困らせるコトなのか?なんて。真剣な目で訊ねられて。
「俺は大丈夫だけど。――サトリ君の方が、心配だよ」
「颯君のヘタレ…。もういい」
どうせ帰り方向違うんだから待ってなくていいよ。と、くるりと背を向けられた。
「サトリ君」
「先に帰れって」
着替えるトコ見せるだけなんてサービスはしねえぞ。って言われて、慌てて背を向ける。
「ゴメン」
―――言い訳することも許されず拒まれて。そのまま入口のドアノブに手を掛けて回した。
「じゃあ…お先に」
「うん、颯君、お疲れ様」
なんて。結局最後には優しい言葉をくれるところが、サトリ君らしいよ。
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