キラーチューン(颯×サトリ)

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 背中越しにそっとドアを開け閉めする音が聞こえた。 「だから…」 だからどうしてここで素直に帰っちゃうんだよ颯君。 「颯君のヘタレ…」 俺の事が心配ってなんだよ。ちゃんと3か月乗り切れてこれ以上何心配されなきゃいけないんだよ。 ――なんて問いかけられない俺のほうが、ヘタレだってことは言われなくたって解ってる。 「あー。こういうのを『堂々巡り』って言うんだろうなぁ…」 がっくり首を垂れてたら。遠慮がちにドアをノックする音が聞こえたから。 「はい!どうぞ…」 って応答したら。 「あ…小野さん――まだ着てらしたんですね?――後で来ます。ゆっくりでいいですから」 失礼しまーす、と一人で完結してドアを閉めようとしたスタイリストを引き留めた。 「済みません、――ちょっとお時間いいですか!」 「え?――はい。何でしょう」 忙しい相手の時間の都合を気にする余裕すら無くなってた俺は。引き留めたスタイリストに、ムリなお願いをした。  『あーあ、貴方達もうそれ、別れる寸前ですね。カウントダウンで言うともう3まで来てるんじゃないですか。ねえ小野さん』 会えない時間が続いて気持ちも擦れ違い、なんて。ベタな離婚原因ですね~。笑っちゃうくらい貴方達らしいですね。なんて。 電話越しだから面と向かって言われなくても、身も蓋もない失礼なニノの言葉に傷つくのはもう慣れっこだ。 「だから…誰が別れるなんて言った?ホント失礼極まりないよお前」 コイツに連絡したのは失敗だったかって舌打ちする。 『そんなに褒められても何も出ませんよ』 「今の俺の台詞の何処に、オマエを褒めてる処があったんだ?」 『まあいいですよ。――トコロでアナタ、こんな夜中に泣きごと言いに連絡してきたんですか?』 俺貴方と違って忙しいですから、そろそろ切りますよ~。なんて。スマホを遠ざけたのか突然声が小さくなったから。慌てて声大きくして引き留めた。 「待てって!どうせお前アイダちゃんと一緒じゃないなら夜な夜なゲームしてるだけだろ」 『それが話を聞いてもらいたい人の言いぐさですか』 何時もの調子でこんな中身のない会話で終わらせる訳にいかないんだよ。 「――ゴメン…。ホントはお願いしたいコトがあるんだ」 電話越しに溜息が聞こえる。 『小野さんから掛けてくるなんて珍しいですからね。どうせ厄介事頼まれるんだろうなとは思いましたよ」
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