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今日も朝のロンドン関係の取材にはじまり、雑誌のスチール、最後は火曜ゼロサム。
「ホントに一日お疲れ様、俺…。よく頑張りましたね」
労ってくれる人なんか居ないから、自分で自分を褒めながら、深夜1時過ぎに家に戻る。
ロンドンに発つまでにあと1週間もない。
忙しくてもそろそろスーツケースに荷物を詰め込まないとまずいなあ…。今夜あたりからやっておくか、なんて。駐車場でドアロックのリモコンのボタン押して。セキュリティ用の蒼いLEDランプが点滅したのを確認してから、エレベーターに向かう。
そういえば俺今日は何時間働いた?起きたの7時で戻ったの翌日1時って…。
やっぱり寝ようかな。なんて、早速ロンドン行の準備は明日以降にすることに決めた。
決めた途端、ベッドが恋しくなって何となく反射のように大きな欠伸まで出る。
涙目になりながら家まで辿り着いて。バッグから鍵を探り出したら鍵穴に差し込んで一回転。
―――?あれ?
鍵が開錠された手ごたえがなかった。
ってコトは俺。今朝鍵をかけ忘れたのか?
もう一度逆に回したら今度は施錠される音がしたから。ずっと鍵が開いたままだったことに気づいて青くなる。
「おいおい俺…疲れてるって言ってもそれはナイよ…」
出かける時には施錠した後必ずノブを回して確かめてるはずなのに。
防犯きちんとしてるマンションだから、まさか窃盗犯に侵入されてるなんてコトは無いとは思うけれど。
少し凹みながら、再度開錠して。ドアを開いたら。
玄関は暗かったけど、明かりのついてたリビングから飛び出して来た影が。
「そー君お疲れ様!」
声で相手は解ったけど。
「え!?――さ…ッ」
サトリ君!?って呼びかける前に。凄い勢いで近づいてきた黒い塊にどん!!って飛び付かれた。
「うわっ…え?…ええ!?どうしたの?」
嬉しいより先に驚いた方が大きくて。ぎゅうぎゅう抱き付かれてされるまま足元がよろめくばかりで、抱きしめ返すことも出来ない。
「黙って来てゴメン…」
怒ってる?なんて。胸元から上目遣いで見上げてくるサトリ君。
うぁ!!!――か…可愛い。
思わず顔を背ける。
夢にまで見た。体温を感じる久々の至近距離の笑顔。
暗がりだったからまだ助かった。明るかったら微笑みの爆弾の破壊力が何倍にも跳ね上がったはず。
「怒ってない、よ?」
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