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「え!?――何それ。貴方達…小学生!?」
信じらんない、ってテーブル挟んで座ってたニノは。わざわざ箸をとめて、珍しいモノでも見るようにまじまじと俺の顔見たから。
――取り敢えず抗議した。
「小学生じゃないもん。俺達大人だから、分別あるお付き合いをしてるの!」
出し巻き卵一切れに大根おろしのっけて。慎重に醤油注しから数滴かけて大根おろしに染み込ませてく。
「あのさぁ。アイダさんの口から『分別ある』とか飛び出しちゃうことがすでに転変地異の始まりだから」
貴方とエルって付き合い始めてからどれくらいよ、って訊かれて。
箸でつまみ上げた出し巻き卵をそのままひと口で頬張って、もぐもぐしながら俺は言葉を濁す。
『――もうすぐ…半年…かな』
「うーわっ。それでチューだけなんでしょ?――ありえねー」
最近の中高生のほうが貴方達よりよっぽど進んでるっての。なんて、ニノから返ってくる言葉は悪口だけだから。俺だって面白くないけど。
「どうしてなんですかね…貴方にはそういう魅力が欠如してるんですかねぇ」
なんてトドメのように言われて、物凄く不安になった。
「俺って。――そんなに可愛くない?」
流石に箸もグラスにも手が付かなくなっちゃう俺に、慌てたニノが。
「アイダさん…涙目ですよ?――あのね。可愛く無かったらちゅーすらしないですよ。エルは貴方の事大事にしすぎなんですかねぇ…」
何時も二人のときどうしてるんですか?って聞かれて。
「――お互いの家に行って。一緒にご飯つくったり…。ゲームしたり。話したり…かな?」
「いいなあ友達みたいで――っ…!!いや、済みませんつい…」
今夜初めて、悪口以外の台詞を言った気がする。
「じゃあニノとリーダーはどうなの?」
「もうね。あの人が家に来たら。嫌んなるくらい押し倒されてます。俺も一緒にご飯作ったりゲームしたり話したりしたいのに。そんな暇もありません」
「――」
「だから黙って半泣きしないでくださいよアイダさん。なんですか?結局――エルに押し倒されたいんですか?」
「俺は…一緒に居られたらそれでいい」
「じゃあ今でベストじゃないですか」
「でもそれじゃあ「友達みたい」なんでしょ?」
仕方ない人ですねえ。って溜息ついたニノは。ひとつ俺にヒントをくれた。
「――環境変えてみたらどうですか。たまにはおうちデートじゃなくて。何処かに行ってみたらいじゃないですか」
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