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「腹はすいてるけど…何で?」
鍵を開いてくれたルン君の腕とドアの間をすり抜けて部屋に入ったら。手を伸ばして部屋の明かりを点けた。
「俺ね?会いたかったから来ちゃったんだ。ルン君疲れてるの解ってるのに…ゴメンね?」
約束してないのに押しかけて来ちゃって、ルン君もきっと困ってるだろうから。
「――ご飯作らせて?今夜は一緒にいるだけでいいから…」
これぐらいしかできないから。なんて言い訳しながら靴脱いでキッチンに向かおうとしたら。
「アサキ」
慌てて靴脱いで追いかけてきたルン君は。ぎゅ、って後ろから抱きしめて俺を立ち止まらせた。
「――俺もホントは。今夜オマエん家に行こうかどうしようか、すっげー悩んだ」
アイダさん疲れてるかと思って、俺はこっちに帰ってきたんだけど…。
顔見えない分、かえってルン君が俺のこと大事にしてくれてる気持ちが抱きしめてくれる体温ごと伝わってきて。凄く嬉しかった。
「アリガト。俺午後はずっと家に居たし、もう全然疲れてないよ?」
ただ一緒に居るだけなんて、俺に我慢できるわけがない。触れたいし、キスしたいし。抱かれたい。
「ねえルン君…俺の事、欲しい?」
「欲しい。今すぐ欲しい」
って即答してくれて、背中越しに抱きしめてた俺を正面に向き直らせたら。
「――その前にさ…ひとつお願い聞いてくれよ」
ルン君は企んでるみたいにニヤリ、ってちょっと唇の端を歪ませるだけの、何かえっちな笑みを浮かべた。
「なに?」
「『お帰りなさい』って出迎えてくれる奥さんが言う、決まり文句があるだろ?」
「うん」
さっき玄関先でお帰り、って言われたのが新鮮だったんだって。意外にルン君…シチュエーションフェチ?
食材入った袋を廊下の隅っこに置いちゃってから。ルン君の首に両腕を絡めて見つめ合いながら。
「お帰りなさいアナタ…。ねぇ、ご飯にする?――お風呂にする?それとも…わ、た…し?」
目いっぱい可愛く誘ったのに。ルン君は少し目線をそらしながら。
「――んー、じゃあ…風呂かな」
なんてまさかの衝撃の返答が返ってきた。
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