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昨日渡された第三話の台本をとりあえずは他の現場にも持ち歩いて流しで読んでみる。
俺が演ってる主人公野本は、延々ト書きだけで台詞ないまま、色んな動きを無表情でやらされると思ったら。
突然3ページぶっ通しの長台詞を放り込まれたり。
とにかく喋ってる時と黙ってる時の演技の差が激しい。
今回も覚えるだけじゃなくて、他の演者とタイミングを合わせるのが難しい、と思いながら、ト書きの多い野本の動きを確認してたら。
「あ!――リーダーやってるねぇ」
今日の雑誌の企画ものの撮りはアイダちゃんと一緒。
「俺もじゃあ予習しちゃうかな~?」
アイダちゃんも同じクールで日のテレで推理物猫探偵ドラマやってるから。台本と赤いペンをバッグから取り出した。
俺の読んでる台本をちらっと見たアイダちゃん。
「うわ…台詞すご…」
ほら見てよリーダー。俺の台本凄くフツーな気がする。って広げて見せてくれたのは。
台詞かト書きがどっちか偏る、ってことはない、バランスのとれてる猫探偵の台本。
「そうなんだよ――ただ長いだけならいいんだけどさあ…半分は何かの専門用語とかで、初めて聞く言葉ばっかりだから、もう覚えるだけで精一杯なんだよな…」
「アハハ…撮り終わった途端に忘れるようにしてる、ってリーダーが言うの、何か解る気がするよ」
「だって次入れるには、前の台詞を追い出さないと無理だもん」
「あ、それは俺も一緒かも」
「うん…」
台本読み始めたアイダちゃんの言葉が少なくなるから。俺も黙ってページをめくって。とりあえずは話の流れを押さえておく。
――そう言えば。
丁度いい機会だし、聞いてみたいことがアイダちゃんにあった。
「ゴメンアイダちゃん…」
「なあに?」
「――アイダちゃんてドラマ撮りの期間て…ニノと会ってたりするの?」
「まあ忙しくはなるけど…結構会ってるかな?」
どうして?って顔を上げて聞いてくるアイダちゃんに。
「何でもない」
って応えるけど。ホントは何でもなくない。
颯君が執事のドラマやってた時はこんな事しなかったのに。
どうして俺が撮りに入ったら『暫くお泊りは止めよう』って事になったんだろう。
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