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5人会う仕事がひと月ぶりって事は。颯君と会うのもひと月振りってことだ。
エレベータ―待ちして、ぼーっとしながら降りてくるエレベーターの階数表示がどんどん1に近づいてくるのを眺めてたら。
「はよーっす、小野さん」
「オハヨ、ルン」
隣に立ったルンに。肩を叩かれた。
「――あれ?」
仕事で会う時のルンの第一声は大概。『焼けた?』『釣りか?』が定番なのに。
「もしかして…痩せた?」
ルンも俺の事よく観察してるヤツだから。すぐに言い当てられて嬉しいような恥ずかしいような気分になる。
「――解る?ちょっと、絞った」
「ドラマの画、つながるか?」
「あと録り最終話だけだから、何とかなる」
コンコン。とルンがノックする力強い音の後、中から颯君の『どうぞー』って声が聞こえてきた。
「はよーっす」「オハヨウ颯君」
「二人ともオハヨー。アイダちゃん…お疲れみたいだから、ギリギリまで寝かせてあげて?」
ソファを見ると、何時もなら俺が寝転がってるのに、珍しくアイダちゃんが横になってた。
「――うーゎ…。凄ぇ…寝てる顔が苦しそう…」
アイダちゃんの顔を見たルンが気の毒そうに言うから。しゃがんで俺もその顔を覗き込む。
起きてるんじゃないか?ってくらい力を込めてぎゅ、って眉を寄せて瞼を閉じてるアイダちゃんに。
「アイダちゃんもそろそろクランクアップのはずだから…―― 一緒に頑張ろうな…」
「サトリ君こそ。――そろそろ疲れが溜まってきてるトコロじゃ…ないの?」
声をかけてきた颯君と、立ち上がった時に目が合ったけれど。
「――」
あれ?
――気のせいか、不意に視線を外されたように感じた。
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