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さっきとは逆で、僕が前に立って進む。
後ろから聞こえる、さくっという音を確かめながら足を動かした。
少し歩いていくと、今までの狭い道より、ほんの少し広い場所にたどり着く。
そこには古びたラジオが、ぽつんと置いてある。
誰が、いつ、何故、置いたのかは知らない。
だけど、おかしなことにこのラジオは今も動くのだ。
昔から、冒険とか探索とかが好きだった僕は、ある日この小路に入り、この不思議なラジオを見つけた。
すぐ次の日に親友の広輝をつれてきて、電源を入れた。
そこから流れる声は途中かすれているが、僕にとって心地いいものだった。あいつも興味をそそられたようで、それから毎日、あいつと一緒にここへ来ていた。
「最後なんだから、お前がつけなよ。」
無言で、広輝がラジオに歩みよる。ラジオに触れようと伸ばしたあいつの手は、なぜか微かに震えていた。
ぷつっという音のあとに、この場にふさわしくない賑やかな音が広がる。
『まずはぁ、ドキドキっ!星座占いー!!本日最っ高の運勢は――じゃん!おとめ座の皆さん☆今悩んでいることをふっきれそうな予感!ラッキーアイテムは“ラジオ”良かったね!今これ聞いていればいいことあるかも!?続いてぇ――』
ハイテンションの声が次々と流れる。
「俺、おとめ座。」
ぽつっと広輝がつぶやいた。
「良かったじゃん。」
それきり広輝は黙ってしまった。
“悩んでいることにふっきれそう”
その言葉が、お腹のなかでぐるぐるまわっていた。
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