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「もう、帰ろう。」
広輝がこちらを見ないまま、言った。
気まりの悪い空気が、僕らの間に流れる。
あいつは、きっと優しいから、2人でこそこそとここに来ていることが、彼女に後ろめたく思っているのだろう。
そして、多分僕にも申し訳なく思っているのだろう。
ぬるい風がそっと吹きぬける。
「……終わり?」
「……あぁ。」
「そ。」
「俺が行かなくても、お前だけ行ってもいいんだよ?誰にも言わないって約束する。」
そんなの……
「いい。僕も行かないから。もう、終わり。」
つまんないだろ?
「そっか。」
広輝が僕に背中を向けて歩きだす。
逆光で、かすかに黒くなったその後ろ姿を見ながら、僕はそこから動けなかった。
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