2人が本棚に入れています
本棚に追加
「つまんないよ。」
「え?何か言ったか?」
「ううん。」
小路を抜けるまであともう少し。
ラジオの音はもう聞こえない。
「なぁ。1つだけ頼んでもいい?」
「何?」
「10年後に、もう一回一緒に来てよ。」
広輝は立ち止まって、こちらを見て笑った。優しい笑顔だった。
「あぁ。また来ようぜ。10年後に。」
「覚えてろよ。」
「お前が、覚えてれば大丈夫。」
「あほ。」
それから10年後の未来について話ながら家に帰った。
10年後。
もう、あのラジオは壊れて動かなくなっているかもしれない。
つけっぱなしにしてしまったから、電池が無くなっているかもしれない。
もしかしたら、あの場所は無くなっているかもしれない。
だけど、きっと行こう。
2人で。
僕らだけがリスナーだったあの場所へ。
最初のコメントを投稿しよう!