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ここは、リベール王国のクローネ峠を越えた先にある村、マノリア村。
海沿いにあるこの町は潮の匂いがしている。
そんな町の片隅に、ある古くも新しくもない木造の家があった。
陽の光を浴び、眩しさで起きた一人の少年。起き上がって両の手をグーとパーを繰り返している。
二度三度、瞬きをして自分の全身が写るほどの、大きな鏡の前に仁王立ちして驚きに目を大きく開く。
「転生……できたんだな」
自身をくまなく触って調べる少年――凛は自分が転生できたことを喜んだ。
「えーっと、そういやこの世界ってどんな世界なんだ?」
この世界の記憶と前世の記憶が 少し混同しているが、凛はこの世界で生きた記憶だけを引き出そうとする。
頭を過るのは、木造の家、この世界の父親と母親の顔、ここでの生活、マノリア村、ルーアン、リベール王国……。
「ちょ……っと待てよ。リベール王国って言ったら……」
もっと思い出せ。考えろ。そう自分に言い聞かせ、もう一度思い出す。
導力を使った飛行船や照明、戦術オーブメントを使った魔法……それに、それを行使する遊撃士。
嘘だろ? と凛は今の現状が理解できなかった。なんせここは――ゲームの世界だからだ。
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