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「何を騒いでいるんだ、リン」
自分の名前を呼ばれ振り返ると、そこには深い緑色の髪を持つ四十代くらいの男がいた。
凛は自分の名前がリンだと、さっきのことでさして驚きはしなかったが、この世界での父親を見てあんまり似てないなと思った。
「え、えーっと……発生練習!」
「そうか、まぁお前がやりたいことをすればいい。朝食の時間だから速く来いよ」
そう言って、リンの父親――シバは部屋を出ていった。
胸を撫で下ろし、この世界のことをもっと知りたいと思ったが、グ~と腹の音が鳴り響き、先に朝食を食べようと思った。
「ごちそうさま~」
「お粗末さま。遊びに行くのはいいが、街道には出るなよ? 魔獣に食われちまうからな」
「わかってるよ~」
言わずもがな。リンは元々武道はからっきし、喧嘩すらしたことがない。
そんな自分が街道を出るなど、自殺行為にも等しい。……それに、前の世界で好奇心のせいで死んだのだ。
魔獣は見てみたくても、命を賭けてまでは絶対にしない。
「お~~~~~い、リ~~~~ン」
遠くからリンを呼ぶ声が聞こえる。すごい速度で走って来る人は真っ直ぐリンのところに――体当たりしてきた。
「ぶっ!!」
「あっ……ごめん」
二転三転と転がるリンを見て、ごめんで済ますのはどうだろうか。
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