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他の子供たちも蜘蛛の子が散らすように逃げていく。リンはショウに悪いと思い、踏み止まっている。
「……行ってこいリン。鬼は俺がやるから……」
「うん、ありがと」
何度か振り返り、走り出す。顎に手を当て、考える素振りを見せるリンはあるものに目を止めた。
それは村のすみにある風車で、そこから見る海はかなりの絶景で、いつまでも見飽きないだろう。
「ここでいいかな?」
風車の影に隠れるようにして一息つく。しばらくは動かないことにして海を眺める。
流れる海、白いカモメが飛び交う。肌で感じるのは潮風、潮の匂い、五感すべてで感じることで、リンはこの世界に転生したことを再び実感する。
「ふ~~。ここは気持ちいなぁ~」
体を伸ばして深呼吸していると、海の向こう側から鳥が飛んできた。
ただの鳥ではない。虹色に輝く奇怪な鳥だ。真っ直ぐリンのところに飛んでいき――顔にぶつかった。
「ぶっ!」
ひっくり返るリンだが、虹色に輝く鳥は我が物顔でリンの顔の上に降り立つ。
今日はよくぶつかる日だなと思いつつ、奇怪な鳥を鷲掴みにする。
「ちょっ! 痛い痛い痛い! 離してくれ!」
「聞けない相談だな。鳥が何で喋れるのかは知らないけど、この際はどうでもいいかな」
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